概ね18歳以下が子ども(子ども・子育て支援法)とされていますが、人の成長には個人差・性差がありますので、治療を大人の矯正とこどもの矯正と年齢で区切ることは困難です。
しかし、こどもの矯正と大人の矯正と分ける考えがあるようですので私見を述べます。こどもから大人になる間には上顎よりも下顎の成長量が大きいため顔面骨格が変化しますが、成長完了後にはほとんど変化しないことから、ほぼ成長完了した時点を大人、それまでの成長中をこどもとして考えてみます。
中学生前後で六歳臼歯より前の歯が永久歯に生え代わっていれば、大人の矯正で使用するマルチブラケット装置を装着できること、親知らず以外の永久歯列が完成するのが中学生のころで、身長の伸びのピークが平均的には女子で11歳、男子で13歳でありその後数年間は伸びることを考えて今回以下のように致しました。
小学生の時期はこどもの矯正、中学生はこどもの矯正から大人の矯正への移行期と、高校生は(成長中の男子を除き)大人の矯正の時期としての説明を行います。
大人の矯正についてはこちら
小学生のこどもさんの歯並びが気になる保護者さんから、「何歳ごろに矯正相談に行ったらいいんでしょうか」と聞かれる時があります。最近の答えは、「早めに一度受診されて下さい」です。
矯正に最適な時期は子どもさん毎に違いますが、視診だけでなくパノラマX線写真とX線セファログラムを撮って判定します。この2枚のX線写真が無いと治療に最適な時期は分かりません。
もし、数年後に治療開始しても今すぐ治療開始しても治療終了時期が変わらなくて同じように治せるケースなら、すぐに矯正治療を開始せず、年一回位の観察に来ていただくだけで、保護者の方と同意の上で治療開始を遅らせることが良くありますので、ご心配なくご来院ください。
もちろん、すぐ矯正治療を開始した方が良いと思われる不正咬合の場合は、早期の治療開始を推奨致しておりますが、初診日に精密検査を急がせるようなことはしておりませんので、帰宅後に家庭で検討されて、治療を希望される時だけ、検査予約の電話をされて下さい。
後で治療開始しても良い場合があるのに、なぜ初診を急がせるのか不思議に思われるでしょう。
その理由は、まだ生える前の永久歯(大半が上顎埋伏犬歯)が異常な方向へ傾くことがあり、そのため前方の永久歯(前歯)の歯根吸収を引き起こす恐れがあり、歯根吸収が進むと、その歯を抜かざるを得なくなるためです。
しかもこれは口の中を見るだけでは分からず、パノラマX線写真を撮らないと絶対分からないためです。このパノラマX線写真は、こどもでは健康保険での撮影が認められていませんので気付かれていないのが現状です。
永久歯(前歯)の歯根吸収を防ぐために埋伏犬歯の生える方向を変えたり、著しく変な位置に埋伏している永久歯などを妥当と思われる位置に引っ張ってくる処置を、埋伏犬歯(埋伏歯)の牽引(けんいん)と呼びます。なお、埋伏歯に牽引用のブラケットを装着するまでの処置は、連携している口腔外科に依頼致しております。
右の写真は、歯が良く生えるか心配ということで来院された患者さんの写真です。
口腔内写真では全く分かりませんでしたが、パノラマX線を撮影したら右上の犬歯(3番)で右上の中切歯(1番)の歯根吸収が見つかりました。
また反対側の左上の3番も左上の1番に向かっており、放置すれば左上1番の歯根吸収を引き起こすのが明白ですが、急いで左上3番を本来の位置へ動かせば左上1番や2番の歯根吸収を避けられる可能性があります。そのため、至急対処が必要になります。
しかしこの例のように、異常な埋伏犬歯があってもX線写真がなければ見えませんので、ご家族が気づかれないのも当たり前なのです。当院で、歯並びが気になったら出来るだけ早めに受診して下さいと呼びかけているのは、この異常な埋伏犬歯をX線写真で早期に察知できれば、歯根吸収を防ぐ処置ができるからです。来院が早ければ早いほど異常な埋伏犬歯による歯根吸収を防止する治療が可能になります。
当院では口腔外科と連携して埋伏犬歯の生える方向や位置を変更して牽引する治療を行っております。
口腔内写真:8歳11カ月
パノラマX線写真:8歳11カ月
先ほどの患者さんのCT画像です。右上1番は著しい歯根吸収のため抜歯と決め、抜歯部位へ右上3番を誘導するための牽引と、反対側に埋伏している左上3番による左上1番、2番の歯根吸収を避けるために、後方へ動かすための牽引を行うことにしました。
埋伏犬歯への牽引装置の接着は口腔外科に依頼しましたが、それ以外の矯正治療は当院で行いました。幸いにも、左上の前歯2本は、左上埋伏犬歯の後方への牽引が成功しましたので、歯根吸収を避けることが出来ました。
当院では、これ以外にも、放置すれば永久歯や歯ぐき、顎の発達などに為害作用を及ぼす可能性がある場合や、非抜歯治療につながりそうな場合には、こどもの治療を行っておりますので、ご遠慮なく来院されますようお願い申し上げます。
主訴
歯が良く生えるか心配。
診断
上顎右側埋伏犬歯による上顎中切歯歯根吸収、および上顎左側埋伏犬歯による上顎左側中切歯歯根吸収の恐れ。
年齢
8歳11カ月
治療に用いた
主な装置
上顎リンガルアーチ、部分的なブラケット装置
抜歯部位
右上1番(歯根吸収歯)
治療期間
2年8カ月
治療費概算
約57万円(口腔外科の費用以外)
リスク・副作用
歯根吸収、歯肉の低下、口内炎、正中線の不一致、形態修正部の再修正が必要な時がある、など。
CTの3D写真
右上1番抜歯後、
上顎左右3番の牽引開始時
右上3番を抜歯した
右上1番の所へ牽引後、
ブラケット装着時
治療後、右上3番はコンポジットレジン
を追加して右上1番に見えるように
形態修正
こどもの時期に矯正治療をすることにはメリットとデメリットがあります。
異常な状態の埋伏犬歯などを早期に牽引して移動させることで永久歯の歯根吸収の防止につながります。
大人より痛みを軽く感じると言われますので、治療後の不快感が少なくてすみます。
成長中にヘッドギャその他の上下顎関係の改善が期待できる装置が使用出来れば、側貌が改善したり、マルチブラケット装置をつけるときの治療がしやすくなります。
奥歯の側方へのずれ(おもに六歳臼歯部の交叉咬合、鋏状咬合)を放置しておくと、成長時に下顎が左側や右側にずれる恐れがありますが、早めに治療すれば、ずれの減少や改善が期待できます。
下顎は装置で拡大できませんが、上顎は正中口蓋縫合部を急速拡大装置で拡大できますので、臼歯部の反対咬合を治したり、場合によっては非抜歯にできる時もあります。
開咬の原因となる事が多い舌(突出)癖などの改善や前突している前歯を後退させれば、口が閉じやすくなります。
部分的な反対咬合などで、噛む時に歯を動揺させる力が加わると歯ぐきが下がりやすくなりますが、治療により、その進行を止めることが期待できます。
低年齢で何のために矯正するか理解してもらえないと、取り外し式の装置をあまり使わず治りが不十分になったり、歯磨きもおろそかになり、歯肉炎や虫歯になりやすくなります。
混合歯列期(乳歯から永久歯に生え代わっている時期)に歯列を整えても、永久歯がきれいに並ぶとは限りません。
部分的な矯正治療と思って治療開始していても、生えてきた永久歯の位置や大きさが想定外で、マルチブラケット装置で歯列全体の治療が必要になった場合、合計治療期間が長くなります。
矯正治療を始める場合には、次のような流れで進めます。
01.
初診相談
まず、口腔内や顔貌のチェック、レントゲン撮影を行い、その後簡単な治療説明、現在のお悩みについて詳しくお伺いします。
質問があれば、どんなことでもお気軽にお尋ねください。
無理に治療をする必要はありませんので、ご帰宅後に治療を希望される場合には、次の検査の予約をしていただきます。
02.
精密検査
歯型など、治療計画に必要な資料を揃えるための検査を行います。
03.
診断と治療方針の説明
検査資料に基づく診断と治療方針の説明を行います。
矯正治療を開始すると、今まで以上にブラッシングが大切になりますので、歯科衛生士による歯磨き指導も行います。
04.
装置をつける準備
装置を作るための歯型の採得や、装置がスムーズに取り付けられるように歯と歯の間にゴムを入れる処置などをします。
これらの準備が必要ない場合は省略することもあります。
05.
治療開始
装置をつけて、矯正治療が始まります。
矯正治療が始まったら、月に一回程度の通院をしていただき、装置の調整を行います。
こどもの矯正では、お子様自身の気持ちが大切です。
矯正治療は、歯を動かす時には痛みが出ることもあります。装置を取り付けることの煩わしさもあるでしょう。
保護者の方がいくら「良い歯並びにしてあげたい!」と思っても、お子様の気持ちが前向きでなければ矯正治療はうまく進みません。
お子様とよく相談の上、矯正治療を始めるようにしましょう。
矯正治療を希望する方からよくある質問を紹介します。
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